独善的ラブストーリー

【R18】出会ったり告ったり致したりする話。 [ 3話目:12,146文字/2022-06-05 ]

3.

 次の日の朝食の時間、いつもと同じ席に観月さんはいた。当たり前の光景だけど、当たり前じゃないことが昨日起こったばかりなもんで、俺は少し緊張しながら席に着く。ほかのみんなもいるんだ、普段どおりにしないと。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよー」 
「お、観月もいるだーね。今日は部活休みだから、放課後みんなで遊びに行くだーね!」
 試合の次の日は部活は休み。これは通例だ。先週の青学戦の次の日だって、みんな自主練してたものの、部活自体は一応休みだった。観月さんはデータ収集とプランの構築とか言ってたっけ。そんなわけで先週は休んだ感じがしなかったから、みんなで遊びに行くっていうのは楽しみだ。
「いいねいいね! どこ行く?」
 ノムタク先輩と同じく、俺もすごく乗り気だったんだが
「ボクは用事があるので遠慮しておきますよ」
 いちばん一緒にいたいひとはものすごくそっけなかった。
「ちっ、付き合い悪いだーね」
 観月さんはそれ以上なにも言わず自分のトレーに視線を落とす。用事ってなんだろう。もしかして、昨日の帰りに『明日にしなさい』って言ってたことだったり? ドキドキそわそわしながら観月さんを盗み見たけど、視線は合わなかった。

 食事のあと、柳沢先輩に声をかける。
「すみません、俺も今日用事があって」
「あっそ。裕太は別にどうでもいいだーね」
 俺に興味なさすぎだろって思ったが、理由を突っ込まれないぶんは楽でよかった。柳沢先輩は、観月さんのことを気にして遊びに誘ったのかもしれないな。クラスが違うから、日中話す機会はあんまりないはずだ。まあ、観月さんのことは俺に任せてほしい。なにしろ俺たちは付き合ってるんだからな!
 その場を離れると、浮かれた気分でメッセージを送る。
『観月さん 放課後会いに行ってもいいですか』
 他校に偵察に行くようなときはそのまんま言うんだから、単に〝用事〟ってなら俺との約束なんじゃないか、なんて……ほんとに別の用事がある可能性もあるんだけど。返事が来るまで長く感じたけど、時間を見れば数分のもんだった。
『いいですよ。放課後、部屋に戻ったら連絡しますね』
 やっぱり! 俺のためだったんだ!!!
 それから授業が終わるまで、ものすごく長く感じながら悶々と過ごしてた。昨日のかわいかった観月さんを思いだしたくなるけど、あんまり具体的に考えるとまずいことになるから大変だ。
 放課後、俺はスキップしたい気分でまっすぐ寮の部屋に帰った。みんな学校からそのまま遊びに行くって言ってたから、テニス部の補強組で寮に残ってるのは俺と観月さんだけってことになる。
 観月さんからのメッセージはまだない。三年生だって授業が終わる時間は同じはずだけど、観月さんは委員会やらなんやらあったりするからな。よくわかんないけど演劇部にも出入りしてるらしいし。
 さて、どうしてようか。落ち着かない。ベッドに転がったらうっかり寝てしまいそうな気がする。そのうち、俺の目は部屋の一角の開かずの扉に釘付けになった。
(シャワーブース……)
 初日に観月さんが言ってたとおり、俺は一度も使ったことはない。ノムタク先輩も使ってないはずだ。なんのためにあるんだろうって言ったら、女子寮向けの設備なんだって。男子寮と女子寮はもちろん分かれてるけど、建物の造り自体は同じなんだそうだ。ノムタク先輩がなぜか得意げに教えてくれた。
 普段は見向きもしないが、今日はこれから観月さんと会うんだ。付き合ってる状態でふたりきりで会うんだぞ。シャワー浴びるべきなんじゃないか!? いや、なにも起こらなくたってきれいにしといたほうがいいだろう、観月さんはいつもいいにおいするし……俺は服を脱ぎ捨て、急いで念入りにシャワーを浴びた。
 シャワーから出て頭を拭いて、着替え──なに着てけばいいんだろう。俺の脳内ではデートだけど、外に遊びに行くわけでもないだろうし、変に意識しすぎるのも恥ずかしいし、結局いつも寮で過ごしてるフツーの服装になった。うん、自然体のほうがいいだろう。
 一生懸命歯を磨いてるとメッセージが来た。観月さんだ! 部屋に戻ったから来てもいいよって。『すぐ行きます!』って送って歯磨きを済ませて、それから一応勉強教えてもらう体でノートとテキストと筆記用具を抱えた。
 ──コン、コン
「観月さん。俺です」
「どうぞ」
 迎えてくれた観月さんは、制服からネクタイを外しただけの格好だった。俺はサッと素早く部屋に滑り込む。みんな出掛けてていないだろうが、なんとなくだ。
「観月さん。大丈夫だったんですか、用事」
 にやけそうになる口の端を引きつらせながら、よそよそしく尋ねる。だって〝昨日約束したから会おう〟って言われたわけじゃないからな。
「ええ。もう済みましたよ。それは……」
 観月さんの視線の先は俺の抱えるテキスト類だ。俺はいつもと同じように座卓に座る。
「勉強教えてください」
「お茶いれましょう」
「大丈夫ですっ! 喉渇いてないんで」
 観月さんの提案もいつもどおりだったが、いつもと同じにくつろいだらいつもみたいにゆっくりしそうな気がしてことわった。今日の俺はいつもと違うんだ。座卓の上に勢いよくテキストを開く。
「ここなんですけど」
「どれ」
 観月さんは俺の向かいに正座した。一度かわいいって認識しちゃったら、正座する姿までかわいくなってしまった。だって日常で正座ってあんまりしなくないか。どれだけ育ちがいいんだっていうのもあるし、単にそのちょこんとした感じがかわいいのもあるし。
 観月さんの手がテキストに触れる直前、俺はそれを自分のもとに奪うようにしながら観月さんの隣にぴったりくっついた。
「こうすればふたりで見れます」
「……いつもそんなふうにしないじゃないですか」
 怪訝な顔されてちょっとめげそうになったけど、気にせず行くぞ!
「だって、今日は……今日からは今までとは違うんですよ、俺たち」
 隣り合って座る観月さんの腰に腕を回す。細い腰だ。ドキドキする。体の側面を密着させると、ふわりと、花みたいな甘い香りがした。誘われるように、吸い寄せられるように、体を抱えながら観月さんの唇にキスする。
「……!」
 好きだから、恋人のしるしとして。最初のときはそれだけだったけど、今はもっとストレートにキスそのものを求めてる。しっとりした表面も、唇を吸って合わせた粘膜も、驚くほど柔らかいのに同時に刺激的だ。舌を押し込んで観月さんの舌をつつくと、戸惑うように応じてくるのがたまらなく愛しい。ねっとりした感触に自分の中の凶暴で攻撃的なものが煽られて、やばいって思うのに離れられない。
「ン、んんっ…」
 少し高い、籠った声もセクシーだ。観月さんも興奮してるんだろうか。俺の手はある一点を意識しながらも、思いきれずに観月さんの脇腹や腰骨のあたりを制服ごしにまさぐってた。
「はぁっ……」
 いったん顔を離したが、ぽってりと赤くなった唇がものすごくエロくおいしそうに見えて、唇全体を食べるみたいにまたキスをしていた。閉じたままの唇をべろべろ舐める。
「はっ、んっ…」
 声が漏れるのと一緒に腕の中の体がぴくんと震える。
(観月さん、感じてる……?)
 調子に乗って唇を食んでると、思いきり胸を押し返されてしまった。
「んんっ、ちょっと……! 唇が腫れる」
 すでにちょっとふっくらしてるけど言わないでおこう。嫌がらせしたいわけじゃないのに、眉を寄せて嫌そうな顔してるのすらかわいいって思う。もう本当頭働かないな。
「じゃあ、唇じゃないとこにします」
 観月さんのシャツのボタンを上から外してくと、白くて細い首筋が現れる。その下は薄手のインナーだ。ボタンのついたシャツか首まで閉めたジャージの姿を見慣れてるから、これだけでずいぶんな露出に見えて、自分でやっといてドキッとしてしまった。観月さんってみんなと違う時間に寮のお風呂に入ってるから、一緒に住んでる割に裸を見た記憶もほとんどないんだ。
 躊躇を振り払うように、首筋に唇を寄せてじりじり舐めてみる。
「ぅんッ!」
 そんなに強い刺激じゃないだろうに、高い声と一緒に体がびくんと震えた。ほんとに敏感なんだな。驚きつつ、いい気になって喉仏や顎下を唇で食んだり、大袈裟に舌を動かして舐めたり。
「はぁっ、うぅンっ…!」
 腕の中で捩れてこぼれ落ちそうになる体に、近所に住んでる猫を思いだす。
 少し視線を落とすと、インナーごしに小さな突起が存在を主張していた。乳首、立ってるよな……思わず喉を鳴らしてしまいながら、指の腹で潰すように擦ってみる。
「ぁっ、んんッ!」
 完全に感じてる、高い声が俺の下半身を直撃する。もうとっくにそういう状態だったけど、ひときわ来たっていうか。
 薄い布ごしのコリコリした感触がもどかしくて、でもすぐに進むのももったいない気がして、半ば自分を焦らすように両の乳首をいじりまわした。
「はんっ、あっ、あぁっ…」
 だけどかわいい声が上がるとすぐに折れて、観月さんのシャツとインナーをズボンから引っ張り出してた。胸の上まで思いきりたくし上げると、ほっそりした白い体の上で、ツンと尖った乳首が妙に赤々して見えた。いじってたせいで赤くなってしまったのかもしれない。
(エロい……)
 男とかそんなの関係なく無性にエロくて魅力的に見えて、衝動のままそこに吸い付いていた。
「っあ!」
 唇の隙間の小さくて硬い感触。舌先に触れるそれがたまらなくかわいくて、もぞもぞする体を左腕で抱え込みながら夢中で舌を動かしてた。右手でもういっぽうの乳首を摘み上げる。
「ぅあっ! っン、ゆうた、く…」
 やばい、感じながら名前呼ばれるのめちゃくちゃ興奮する。嬉しさと興奮で頭がぐちゃぐちゃになって、全身が下半身に支配されてくって感じがした。
「観月さん……大好きです」
 思うまま口にして、今度は唇にキスした。柔らかくてエッチすぎる唇だけど、キスしてると名前を呼んでもらえない。世の中うまくいかないと思う。
 観月さん、白い頬がピンクになって、戸惑ってるのか困ってるのか、平行になった眉の下で黒い目がうさぎみたいにこっちを見てる。
(観月さん、かわいい……)
 今まで知らなかった顔も全部好きって思う。いつもは線が細くても堂々として強そうなのに、今の観月さんはすごく──俺の中の悪いものを煽ってくる。あんまりほかの人には見せたくない顔だ。
 薄紅の映える真っ白な肌の、胸もとから腹へと手のひらを滑らす。肉が薄いわりに柔らかくて、しっとり吸いついてくる感触がやらしい。
 自分が色黒だと思ったことはなかったけど、日に焼けて少し黄色っぽい俺の肌と観月さんの肌色はぜんぜん違って、そのコントラストに無性に興奮した。シャワー浴びてきれいにしてきたけど、観月さんを汚していくって感覚だ。
「はっ、んっ……」
 肌を撫でるだけでも感じるみたいで、この先どうなっちゃうんだろうってたまらなく興奮しながら、少し前から気になってたズボンの股間に触れた。
「ッ…!!」
 やっぱり。俺は歓喜しながら、その下にある硬いものの形を確かめるようにまさぐった。だってそりゃそうだよな、キスでも乳首でもあんなに感じてたんだから。
「や、やめなさいっ、裕太っ…!」
 ここまできてそんな、めちゃくちゃいまさらだし、めちゃくちゃかわいい。
「大丈夫ですよ、俺も同じですから」
 すっかり気が大きくなって、迷いなく観月さんのズボンの前を開けてパンツと一緒にずり下ろしていく。一瞬毛が生えてないのかなって思ったくらい、まっさらで子供みたいな下腹が現れて、もう少しいくと控えめな陰毛の下できれいなピンク色のおちんちんが首をもたげていた。
(エッッッロ!)
 自分のはチンコだけど観月さんのはおちんちんだ。なんかそんな感じがする。ほかの人の勃起してる状態なんてそんな見たことないけど、それでも観月さんの下半身は俺の常識を覆すエロさだった。ツルンとした花の蕾みたいな亀頭の先が潤んでる。毛の生えてるすぐ上くらいを手のひらで撫でると、下腹部全体が大きく波打って、先走りの汁が糸を引いて滴り落ちた。
「はンッ!」
 ごくりと、自分の喉が鳴る大きな音が聞こえる。
「観月さん……めちゃめちゃエッチなんですね」
「ボ、ボクは触覚が鋭敏なんです、君のスケベと一緒にしないでください!」
 感じやすい体質なのは本当だろうけど、どっちにしろエロいことに変わりはない。
 いったいここはどれだけ敏感なんだろう。根っこを手で支えると、チンコって抵抗感なんてなく先っぽにキスして、キャンディみたいにぺろぺろ舐めた。
「ふぁっ、あぁッ! ちょっ…」
 柔らかいようで硬い弾力と、繊細な凹凸を舌全体で確認する。
(観月さん……)
 口の中に押し込むとそれそのものがいとおしく感じて、義務とか奉仕とかって感じじゃなくかわいいものをひたすら撫でる感覚で舐めまわし、しゃぶった。
「ぅっ、あっ、あぁ、んンッ…!」
 観月さんの手が俺の肩をくしゃりとつかむ。だがそれだけだ。抵抗とか拒否っていうにはあまりに弱くて、甘く掠れる声とときどき跳ねる体が観月さんの望みを正直にあらわしてた。
「はぁっ、あんっ…♡」
 かわいい声。少ししょっぱい観月さんの味。口の中が観月さんの汁でヌルヌルになってて、そこにおちんちんが擦れてめちゃくちゃエロい感触だ。このまま観月さんのを飲みたいって喉に擦れるまで咥え込んだが、思いきり肩を押されて引き剥がされてしまった。
「うンッ! 裕太っ…!」
 口から出した観月さんのものと俺の唇がねっとり糸を引いて、ものすごく卑猥だ。
「き、君はこんなことをするためにっ! 勉強はっ……!」
 本当にいまさらだし、そんなやらしいもの生やして説教されたってぜんぜん説得力がない。俺はニヤリと笑った。
「今日は保健体育の勉強をしましょう。もしかしたら俺のほうが詳しいかも」
「っっ!!」
 細い腰を抱え、股間を露出させたくらいの位置で止まってたズボンとパンツを完全に取り去る。もちろん俺だって初めてだけど、最初に告白したとき観月さん疎いって自分で言ってたし、今の感じ見てたって俺のほうが詳しい気がする。観月さんがエロ漫画読んでるとかいまいち想像できないし。
 膝をつかんで持ち上げながら、観月さんの体を押し崩す。
「っ……!」
 床っていうかカーペットの上に寝かせる格好になるけど、観月さんの部屋だから汚くはないだろう。座布団にしてたクッションを腰の下に入れて、両のふとももを持ち上げてM字開脚にさせる。
「っ!」
 おちんちん、小ぶりで整った印象の玉、それから少しいってお尻の穴。観月さんのプライベートな場所が目の前に晒される。女の人のことは知らないけど、男の裸だってこんな角度で見たことはなかったから、もの珍しくてまじまじ見てしまう。
「あぁ……」
 観月さんは小さく呻くと、目もとを腕で隠して横を向いてしまった。そんなふうにしたって俺には全部丸見えなのに。ものすごく恥ずかしいことさせてるのはわかるんだけど、それよりとにかくかわいいしエロいってほうが俺には重大事だった。小さなお尻を両手で包んで揉みしだく。
「はぁっ、あっ」
 手に収まるサイズ感も柔らかで滑らかな感触もいいけど、俺の目は二つの肉の間に釘付けになってた。
 肛門なのはわかってるけど、なんかやっぱりピンクできれいでエロくて、もうセックスするための場所としか見えなくて。尻の肉を左右に開いて狭間を覗くと、顔を寄せて舌を這わせた。
「ひゃっ! なっ、やめなさい裕太っ! あぁっ♡ そんなっ、とこっ…♡」
 表面をペロペロ撫でるように舐めて、みっちりと閉ざされた肉の隙間に舌先をねじ込んでいく。今までより非難っぽい感じもしたけど、でも観月さん絶対感じてる。そんなの、やめられるわけないじゃないか。
 それに、観月さん制服だった割にぜんぜん汗のにおいしなくて、こんなとこに鼻くっつけてるのに風呂上がりみたいなにおいがする。観月さんの体って臭くならないんだろうか。
「あぁっ、やめっ…♡」
 そんなこと言うくせに、アナルはひくんと収縮して舌を引き込む。カラダは正直だってやつだな。俺はそこをほぐすように舌を波打たせ、蠢かせた。
「ぁあ、んっ……」
 ちゅっと音を立てて口を離すと、中指にたっぷり唾をつけて、求めるみたいに痙攣してるそこに挿し込む。
「ひっ、いっ……!!」
 入口だけ少し濡れてるけど、まとわりつくような抵抗感があって、指一本だって窮屈だ。チンコなんて入りそうにない。でも大丈夫。俺は顔を上げて、かっこいい声を作って言った。
「ふふっ、知ってますか観月さん、男も濡れるんですよ」
「濡れるわけないでしょうっ!」
 照れてるふうでもなくすごく普通に言い返されて、〝観月さんより詳しい〟っていう俺の自信は簡単に揺さぶられる。
「え? いや、こうやっていじってれば濡れてくるはず……」
「君はいったいなにを根拠に」
「姉貴の持ってるBLのCDで言ってました」
「なんてものを聞いてるんですか!」
「事故ですよ! 姉貴の部屋からポータブルのプレーヤー借りたら入れっぱなしになってて」
 そもそもどういう内容なのかも知らずに聴いたんだった。そのCDでは男でも濡れるんだぜって言って、ぴちゃぴちゃ水音がして男同士でセックスしてた。信じてほしい。そのときは自分が当事者になるなんて思いもよらず、『女こわっ』て思ってしばらく姉貴のこと避けてた。
「とにかくっ! アヌスから愛液的なものは出ませんし、腸液でセックスはできません」
 観月さんがそう断言するんなら、きっとそうなんだろう。むしろ腸液ってなんなんだ、三年生の保健で習うんだろうか。観月さんの手に振り払われるまま、すっかり自信喪失した俺はおずおず指を引き抜く。観月さんは体を起こして足を閉じて、体育座りみたいな格好になった。
「じゃあどうすれば……」
「君はボクと、本当にそういうことをしたいんですか?」
「当たり前ですっ!」
「ふーっ……」
 憂鬱そうに眉根を寄せ、細く長いため息をつく。
「仕方ないですね。大っっ変に不本意ですが、今日だけこれを貸してあげます。怪我はしたくないですからね」
 観月さんは立ち上がると、鏡の前から白いボトルを持ってきて俺に渡した。化粧品? MILK、乳液って書いてある。日焼け止め使ったり、リップに気を遣ったりしてるならこういうの使っててもおかしくないか。それからベッドのほうに行って、こっちに背を向けてシャツとインナー、靴下を脱ぎ捨てる。躊躇ない、いい脱ぎっぷりだ。壁側を向いた格好で、一糸まとわぬ白い体がベッドに横たわる。
「来なさい」
「は、はい」
 俺はベッドの横に飛んでいく。
「君も脱ぐ」
「はいっ!!」
 乳液のボトルをベッドのサイドチェストに置いて、服が裂けるんじゃないかってくらい素早く脱ぎ捨てる。パンツの中で窮屈にしてたものが勢いよく顔を出した。恥ずかしがってるのか、観月さんは壁のほうを向いたままだ。
「観月さん……!」
 ベッドに片膝を乗せる、ぎしっと軋む音を妙にものものしく感じて唾を飲んだ。
 ほっそりした背中に寄り添って、観月さんの二の腕から体の前へと腕を回してゆるく抱く。襟足から覗くうなじは色っぽいが、なににも阻まれず肌で感じる体温は優しい暖かさで、エロとかっていうよりなんだか感動してしまった。
 俺の腕の中に観月さんがいて、裸で抱き合うことを許してくれてる。過激な行為ばっかり考えてたけど、これってすごく尊くて、特別なことな気がする。
「観月さん、こっち向いて……」
 観月さんを潰さないように、腕で囲うようにして身を乗り出しながら、首を捻った観月さんの唇に食らいつくようにキスをする。とろけるように柔らかい、やっぱり優しい感触なのに、もぐもぐ口を動かしてるうち興奮してくるのが不思議だ。
「ン……」
 腹に、胸に、乳首にと手探りで触れて撫でまわす。弱く震えたり、大きく波打ったりする体がかわいくていとしくて、ただただ好きだなぁって思う。押しつけた股間が観月さんの尻にめりこんでて、観月さんが動くたび擦れて気持ちいいんだけど、そろそろ我慢できなくなっていた。まわりくどいのはやめて、観月さんの股間のものをつかむ。
「ぅんっ!」
 一時中断したものの、それは硬くて先っぽを濡らしたままだった。ホッとしながらゆるゆるしごく。
「っあ、んっ、ゆうたく…」
 色っぽい声、誘ってるみたいに聞こえるし、名前呼ばれると胸の奥がぎゅっとなる。言霊って本当にあると思う。
 不意に、サイドチェストに置いたボトルの存在を思い出した。そもそもこうなる前のいきさつを思い返すと、観月さんは体を撫で合うよりもっと先を待ってるってことだ。
 考えただけでちょっと漏らしそうになりながら、思いきって観月さんの体を仰向けに転がした。観月さんは無抵抗に従ったが、恥じらうように目線だけ逸らした。それもまた色っぽくて興奮する。
 こっちを向いた白い胸に、ピンクの乳首にしゃぶりつきたくなったが、キリがないので強硬な姿勢で無視した。乳液のボトルを手に取り、蓋を開けてゆっくり傾けると、平らな胸の上に白い粘性の液体がとろりと垂れる。
「……!!」
 思わず声が出そうになった。白くて半透明でとろとろしてて、めちゃめちゃそういうふうに見えるんだが!? 観月さん、わざとなのか!? って混乱してしまった。たぶん、部屋にあった使えそうなものがこれだけだったんだろうけど。
「ちょっと、無駄遣いしないでっ…! ぁんっ!」
 胸に垂らした白濁を指で撫でつけるように引っ張って、滑る指先で乳首を押し潰しながらくるくる撫でる。観月さんは高い声を上げて体を震わせた。こんな調子なんで、怒られたってぜんぜんこわくない。
「お肌きれいになりますよ」
「そこには必要ないですっ!」
 それはそうかも。乳首が白くなったら困るしな。……で、つまり、これをローションの代わりに使えってことだ。観月さん、慎重なのか大胆なのかよくわかんないこと言ってくるな。
「それじゃあ……」
 必要なところに塗ってあげるために、観月さんの脚の間に体を割り込ませてふとももを持ち上げる。M字開脚リベンジだ。観月さんは思いきり顔を横に背けて恥ずかしそうにしてる。
 抱えた腰の上にボトルを傾けると、白い粘液がとろとろと観月さんの股間を伝った。玉からその下へと滴って、窄まりに溜まってく。
「あぁ…」
 いかにも気持ちよさそうに、ため息まじりの喘ぎとともに誘うようにお尻が震える。あまりにエロい光景だが、俺は辛抱して白濁まみれになったそこに指を差し込む。指は、唾をつけたときよりずっとスムーズに呑み込まれていった。
「は、んっ…」
 窮屈であったかい感触が、俺の指をきゅうと締めつける。乱暴にしないように、ゆっくりと肉の海を泳ぐように指を回す。ひだの一枚一枚に触れるように。
「あ、あぁ……」
 要領なんてわかんないけど、きっとよく濡れてないと痛いんだろう。指を抜いて、乳液を伝わせてまた挿し込んで、潤して。見た目も感触も本当にやらしくて、俺はダラダラと我慢汁を垂らしてた。こんなになるの、初めてかもしれない。
「ぁんっ、あぁっ、あっ…♡」
 二本の指で掻きまわすうち、観月さんの声は明らかに感じてるものになっていた。今までもエロかったけど、ちょっとモードが変わったみたいな。
「ここ?」
「あぁっ♡ んっ、んンッ♡」
 ひときわ高い声とともに腰が跳ねて、中がぎゅうっと締まると、褒められてるみたいで嬉しかった。俺は夢中で観月さんの感じるところを探った。継ぎ足した白濁がぐちゅぐちゅ音を立てて指と粘膜の間から滲み出すのがめちゃくちゃやらしい。
(もういいんじゃないか?)
 俺にそんなことわかるわけないんだけど、つまりもう限界だってことだ。
 指を引き抜くと、濡れた口を小さくだけ開けてるそこに自分のものを押し当てる。白い肌の狭間のピンクの粘膜に押しつけると、ガチガチに硬くなってよだれを垂らす俺のものは、獰猛で凶暴に見えた。
「観月さん……」
 大好きで大切なひとを犯して汚していくって罪悪感と高揚感に駆り立てられて、許しも了承も得ずに押し込んだ。だってもう無理だった。いろんなものが爆発寸前だ。
「──ッ!! うっ、あ、あぁぁっ…!」
 すっかりとろとろにほぐれてたようだったのに、チンコを挿れるにはそこは狭くて、細い悲鳴みたいな、掠れた声が上がった。
「うぅっ、あぁっ…」
 それでも先っぽが入ったらあとはゆっくり呑み込まれていくみたいに、俺のものは観月さんの中に沈んでいった。白く華奢な四肢と細い腰に対して、粘膜を押し拡げ進んでいくもののボリュームは非情にも見えて、だけど俺は止めることができずに、むしろ歓喜のなかにいた。
 全部を収めて観月さんの尻に自分の下腹部を押しつける。視覚のエロさとあまりの気持ちよさに、ため息に声が混じった。
「あぁ……観月さん……好きだ……」
 あったかいのに窮屈で刺激的で、俺の全部が観月さんに抱きしめられてる感覚。
 観月さんは目を伏せて、少し苦しそうに深い呼吸を繰り返してる。
(観月さんも気持ちよくならなきゃ)
 裏返った性器をつかまえて、先走りを広げるように手のひらに転がし撫でまわす。
「はぁっ♡ あっ、あんっ、やぁっ…」
 簡単に戻ってきた甘い声と一緒に、俺のチンコもきゅんきゅん締めつけられる。気持ちいいけどもどかしい。
 やめろっていうのか、観月さんの手が俺の手首に絡みつくがぜんぜん力が入ってない。指の感触が、むしろ誘ってるみたいだった。
「観月さん、ほんとエロいんだから……」
 深く交わってるところも、顔も声も息も全部エロい。うっとりした気分で体を前に倒して、あえぐ唇にキスをした。
「んぅっ、んっ……むぅ〜っ…!」
 舌を突っ込んで、口の中を犯すみたいにぐちゅぐちゅ貪る。それで感じてるみたいに、篭った声と荒い息が漏れて俺を煽った。
「はぁっ……観月さん……」
 ずっとこうしてたいって思うのを戒めるみたいに、観月さんの中はゆるやかにうねるように俺を縛り上げる。俺はたまらずゆっくり腰を引いていく。ひとつの器官になったみたいに馴染んでたそこが、熱く甘い痛みを帯びながら引き剥がされていく。細い首が儚げにのけぞる。
「あぁっ、あぁぁ…!」
 先っぽだけ入ってるくらいまで抜いて、またジリジリと挿れていく。あんまり動いたらすぐ終わりそうだから、あくまでゆっくりした動作を繰り返しながら、観月さんの体に俺のモノが出入りするさまを凝視する。
 白い体の中心に、めいっぱいに広げられたかわいいそこに血管の浮いたチンコが呑み込まれていく。
「はぁっ、あぁんっ…」
 天使みたいだった観月さんが、誰にも触らせないような場所に俺のチンコを出し入れされて感じてる。めちゃくちゃエロい。実際やってるのに想像でイきそうになって目眩がする。
「ゆ、た…」
「あぁ、ほんと、ダメっすよ観月さん……」
 もう名前になってないような文字列でも名前呼んでるように聞こえるし、最高に幸せでいとしいのにめちゃくちゃにしたいって思う。
(観月さんがエロすぎるから……)
 引き延ばそうって余裕もなくなって、ピストンの速度を上げていく。
「あぅっ! あっ、あんっ、あぁっ、んぅ…!」
 突き上げるリズムと一緒に大きな声が漏れると、観月さんは真っ赤な顔して両手で口を塞いだ。眉は困ったように寄せられて、潤んだ目がいつもより大きく見える。かわいい。大好きだ。ぐちゃぐちゃにしたい──
「観月さん。大好きです」
 体を倒して、耳に息を吹くようにつぶやいて、口を塞ぐ手の甲にキスをした。
 観月さんの前をつかまえながらピストンを再開する。意識が散ってそんなにちゃんとしごけないが、それでも体の動作と一緒に擦れて感じるようだった。
「あんっ! んんっ♡ やぁっ、だめっ…!」
「だめじゃないでしょ、めちゃめちゃ感じて」
「ん゛んっ…!」
 とろとろになった先っぽの割れ目を指でいじりまわすと、泣きそうな声を上げてのけぞった。もう身体じゅうがエロくておいしそうで、この体勢じゃなかったらいろんなとこ舐めまわしたかった。
「だっ…、出るっ…!」
「大丈夫です、俺もすぐイくんで」
 自信満々にかっこ悪いことを言いながら、もう口から離れちゃってる観月さんの手を取って、自分の首に絡ませた。観月さんは逆らわず首にしがみついてくる。
「!!」
 むしろ俺のほうが早いかもって思いながら、しきりに体を打ちつけた。
「あぁっ、あんっ♡ あっ…♡」
「っく、観月さん、みづきさんっ…!」
 かわいくて、エロくて、恥ずかしがりで、大胆で、あったかくて、窮屈で。ほかのやつには知られたくない、俺だけが知ってる観月さん──
「ふぁっ、あんっ、あぁっ、あぁぁーっ──!」
 ゆるく添えるだけみたいになってた俺の手の中で、観月さんが震えて弾ける。
 ぎゅんと収縮したそこに連れていかれるように、俺も観月さんの中でイッた。細い体が軋むくらい抱きしめて、最後の一滴までも観月さんの中に絞り出す。
「ッ……!! うぅっ……ふぅ……」
 強烈な快感のなかで、自分の情けない声が妙にはっきり聞こえてた。
(やってしまった……)
 少しの間呆然として、自分のしたことを振り返って、理解して──滅多にないような喜びが噴出して、猛烈な達成感に包まれる。気持ちよかった。だけどそれだけじゃなくて、好きなひとと初めてのセックスをしたことが、とにかく嬉しかった。
 荒い呼吸を整えながら、しっとり汗ばんだ観月さんの首筋に額を擦りつける。
「ふー……」
 落ち着いてくると、唐突に頭をよぎるものがあった。
(俺、兄貴より先に大人になったんじゃないか……?)
 そんなとこ張り合ってたつもりなんてなかったけど、気づいてしまうとものすごく堂々とした、勝ち誇った気分だった。
「観月さん。俺、嬉しいです……」
 まだまだ離れたくなくて、そのままの格好で耳もとにつぶやいた。このひとはやっぱり特別なひと。俺を導いてくれる、地上に落ちた天使に違いないんだ。
 
 
 

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