体育の牧先生

【R18】「30代の藤真のJKコス」に萌えただけのアホエロ。最初のほうで携帯電話と言ってるものはガラケーです。 [ 11,891文字/2021-03-24 ]

 牧の部屋の前に立ち尽くし、藤真は物憂げな顔で首を左右に振った。手の中にはじっとりと嫌な汗が滲むが、裏腹に脚の間はスースー寒い。
(こんな……)
 ふう、と一つ息を吐く。こんな格好までして、いまさら躊躇しても仕方がないではないか。元は自分が悪いのだし、早く終わらせてしまおう。
 意を決して目の前のドアをノックする。
 ──コン、コン
「失礼します」
「おお、藤真か! 来たか……!」
 すぐそこで待ち構えていたかのように、即座にドアが開いた。牧は藤真の頭の天辺から足の先まで、何度も視線を行き来させながら満足げに頷く。
「うん、いいな、すごくいい……!!」
 久しぶりのコスチュームプレイで藤真に渡した衣装は、女子高校生の制服だった。白いボディにグレーのセーラー襟に黄色のスカーフ。超ミニのプリーツスカートから伸びた直線的な脚に、彼らの高校時代にはなかったルーズソックスが、いかにもコスプレらしくて可愛らしい。
(まじかよ……そのメガネ、もう度が合ってないんじゃねえの)
 牧の服装は、体育教師のつもりなのだろう。日常でもたまに掛けている眼鏡に、襟を立てた白いポロシャツ、裾が窄まったジャージのパンツ。紐の付いたホイッスルを首に掛けている。
 いたってにこやかな牧から、藤真は居心地の悪い気分で目をそらす。
 女顔の自覚は昔からあるので、女装は別に構わない。実年齢より若く見える、三十代には見えないともよく言われる。だがしかし、女子高生には到底見えないと思うのだ。鏡に映した自分の姿は、化粧こそしていないものの、『店のイベントで無理してるキャバ嬢』のようだった。
(牧、自分が老け顔だから、基準がおかしいのかな……まあ、萎えられなくてよかったってことにしとこ)
 そもそもこの衣装は牧のセレクトだ。結果、牧が萌えようが萎えようが藤真が気にすることではないのかもしれないが、あまり惨めな気分にはなりたくない。
「よく似合ってるぞ、藤真。写メ撮れないのが残念だ」
「うぐっ!」
 牧の携帯電話は、今彼らの手もとにはない。洗濯当番だった藤真が、ポケットに携帯電話が入ったままの牧の服をそのまま洗濯してしまうという、単純だが致命的なミスの結果だった。藤真が気乗りのしないコスプレを受け入れざるを得なかった理由でもある。
(牧、やっぱり怒ってるんじゃ)
 そもそもポケットに入れっぱなしだったのが悪かったと、牧は表面上は怒っていない様子だった。しかし、洗濯機に入れる前に少し確認すれば気づいたろうし、結果的に牧は今非常に困っているはずだ。性格的にも仕事的にも、彼は自分よりずっと顔が広い。携帯電話のアドレス帳は重要なものだったに違いない。
「藤真」
 牧に掴まれた藤真の両肩が、大袈裟に跳ね上がる。
「どうして最近体育の授業に出ないんだ? このままじゃ単位足りないぞ」
「え」
 毎度のことではあるが、牧はコスチュームプレイに寸劇を挟みたがる割に、事前にストーリーの打ち合わせをしようとしない。そして藤真は求められればそれなりのものを返したいと思う性分だった。
(ええと、体育を休む理由……)
「ちょっと、生理がきつくて」
「嘘をつくんじゃない。男の子に生理なんてないだろう」
(女子制服なのに男なのかよ! こいつの世界観一生わかんねえ)
 確かに制服の中の体は完全に男なのだが──牧は自らの設定や言動に一切の疑問を抱かずに藤真を見返す。
「どっか体の調子が悪いのか? 先生が見てやろう。ちょっとここに座りなさい」
 キャスター付きの椅子をデスクから引き、藤真のほうに向けて回転させる。藤真は素直に椅子に腰を下ろし、牧はその正面に膝をつく。
 見えそうで見えないスカートの中からあえて目をそらし、藤真の上着の裾をめくり上げる。ごくりと、自らの嚥下の音がひどく大きく聞こえた。
 白く平らな胸板の上に、ミントグリーンと白の細いボーダー柄の三角ブラが、貼り付くように載っている。布の面積は小さいが、藤真の胸を覆うには充分のようだ。
 平坦な胸から、贅肉はないがくびれというほどの変化もない胴体を、目を細めて眺める。
(ずん胴……いい……)
 思わず息が漏れた。人の好みは変わるものだ。昔はゴージャスでグラマラスな外国人女性こそがセクシーだと感じていた、否、思い込んでいたが、藤真と出会って新しい世界に目覚めた。今は平坦で敏感なこの肉体こそが、愛らしく、そしていじらしく感じられてならない。
 首を前に伸ばし、かわいらしいへそに音を立ててキスをすると、何か堪らなくなってそのまま腹に頬擦りをした。くすぐったいのか、藤真は少し笑ったようだった。
「っふ、先生?」
 見上げると、ブラジャーのボーダー柄が、その下に隠した突起に持ち上げられ、僅かに歪んでいる。
「藤真、持って」
「はぁい」
 めくり上げていた上着の裾をそのままの形で藤真に持たせ、牧は小さな突起をブラジャーの上から指でつつく。
「はっ…♡」
 期待するような声とともに、藤真の体がぴくんと震える。カップの無い、薄い布越しにくるくると弄りまわすうち、硬くぷっくりとした感触が存在感を増していく。
「ん、ぅ…」
 藤真は乳首が非常に敏感だ。堪えるように、もじもじと太腿を擦り合わせる仕草もまた愛らしい。
「あ…♡」
 小さな角の立ったブラジャーを上にずらすと、パステルカラーの世界にくすんだ薄茶色の乳首が現れる。
(ああ、やらしいな、なんてエロい体なんだ……)
 牧は自らの見立てに喉を鳴らした。愛らしいが年齢不相応なセーラー服、二次元的な下着、そこから現れる成熟した肉体とのギャップ。想像以上だ。非常に興奮する。引き寄せられるようにキスをして吸い付き、小さいがはっきりとした輪郭を示す乳頭を舌先で転がすように撫でまわす。
「っ、あっ、せんせっ…んんっ♡」
 ちゅぱ、と音を立てて唇を離すと、吸われていた乳輪全体がほのかに赤く腫れて、なおも誘うようだった。
「敏感だな。ずいぶん使い込んでるみたいだ」
(お前のせいだろっ!)
「緊張してるのか……いや、運動不足でこってるんじゃないか?」
「ち、乳首が?」
「ああ。コリコリしてる」
「あッ! やめっ、あぁ、あッ……♡」
 会話としては非常に馬鹿馬鹿しいのだが、しかし歯の先で、あるいは爪の先で両の乳首を虐められると、藤真は何も言い返せなくなってしまう。一度火をつけられると本当にそこは敏感で、直接触れられていない男性器や、体の内奥までも疼かせた。
「少し、リラックスしたほうがいいな。マッサージしてやろう。立って後ろ向いて、机に手をついて」
 藤真は言われるままに椅子から立ち上がり、机の上に両の手のひらをついた。自然と上体が前に倒れ、尻を突き出す格好になる。
 牧は少し体をずらしただけで、床に膝をついたまま藤真を──短いスカートから覗く、ブラと揃いのショーツに包まれた尻を見上げる。日ごろ特別意識することはないが、昔からの刷り込みで、スカートの中を見ることは非常に背徳感があって興奮するものだった。
「っっ…!」
 褐色の手が剥き出しの太ももを掴まえ、柔らかな感触を愉しむように指を波打たせる。藤真の体もまた、応えるように仰け反った。
 太ももから尻へと撫で上げながら、無遠慮にスカートをめくり上げると、脂肪が薄くボリューム感に乏しい尻に、ショーツの淡いボーダー柄が浅く曲線を描いている。両の手で包める程度のサイズ感にもはや愛着のようなものを感じながら、牧はするすると撫でまわす。
「ぅんっ♡」
「敏感だな」
 誘うように揺れる腰からショーツをずり下ろし、愛らしい双丘をもみしだく。肉が引っ張られるたび、浅い谷間にぷくりと浮いた肉の蕾が晒される。すぐにでも股間の熱いものを押し込みたい衝動に駆られながら、牧は尻肉を左右に割り開き、そこにキスするように唇を重ねた。
「ふぁっ!」
 藤真には牧の姿は見えていないものの、何をされているかはわかる。暖かく湿った粘膜が触れ合っていたかと思うと、やがて軟体生物のような舌が表面を撫でるように這いずった。
「あっんっ、やだっ…!」
「嫌だって? こんなに舐めたくなるようなアナルしてるくせに?」
「あぁっ…♡」
 ぴちゃぴちゃと音を立てながら、ごく浅い部分を濡らしほぐすように舌が蠢く。心理的な抵抗感があるのは事実なのだが、これまでの経験の中ですっかり思い知ってしまった快楽の気配を無視することもできず、つい甘い声が漏れる。
 ちゅぱと音を立てて暖かな唇と息の感触が離れると、今度は冷たいものがぬるりと尻の割れ目を伝った。
「ひゃっ!」
 思わず身を竦めると、背後から不穏な振動音が聞こえる。
 ──ヴィィィィ……
「なにっ…はぅっ!」
 想像はついたものの、後ろを振り返るより先に、振動するローターを肛門に押し付けられ、思わず気の抜けた声が漏れた。
「マッサージ器」
「ん、なっ…あぁっ♡」
 冷たいローションで滑るそこに、少し力を入れて押し付けると、つるんとした楕円形のピンクローターは、藤真の態度に反して簡単に呑み込まれていってしまう。
「あぁ、んっ…♡」
「ほら藤真、もっと楽にして、リラックス」
 言いながら、入り口がぴたりと閉じるほどまでにローターを指で押し込む。大袈裟だった振動音は肉に阻まれ、くぐもってごく弱くなった。
「あぁっ、あぁぁっ…♡」
 中のうねりを伝えるように、閉じた蕾から伸びた細いコードが蠢くのがなんともいやらしい。単調な振動に浸るように目を閉じた藤真は、次に訪れた感触に身を強張らせる。
「二つもっ……!?」
 ローターを一つ咥え込んだそこに、再び同じものがあてがわれているのだ。
「いまさら清純ぶったって無駄だぞ。藤真のここが食いしん坊なこと、先生はよく知ってるんだからな」
 一つならいいような言い草に笑ってしまいそうになりながら、牧は容赦なく二つ目のローターを押し込む。
「っあぁっ…!」
「落とすなよ」
 同様に奥まで押し込み、きゅっと口を閉じた様を確認して、大食らいの小さな尻を両側からぺちぺちと叩く。
「はぅっ♡」
 下ろしていたショーツを元通りに上げ、藤真の背中側の腰ゴムにローターのリモコンを挟むと、牧は自らの成したことに対し満足げに微笑んだ。
「それじゃあ座って」
「座っ……く、うぅッ……」
 立っている状態でも充分に詰まっている感覚だったローターが、椅子に腰を下ろすと内壁に押されて敏感な箇所をいっそう刺激した。ごく単調な振動ではあるが、中での快感を知ってしまっている藤真の体は、それを無視することができない。堪らず太ももや脚をもぞもぞ動かすが、それもまた内部にうねりを与え、快楽を増幅させるだけだった。
「藤真」
「ふぁッ…」
 身体じゅうが敏感になって、肩に置かれた手にも、耳を掠める息にも感じてしまう。
「補習のテキストだ」
「エロ本じゃねえか!」
 机の上に置かれた冊子を見て、思わず声を荒げてしまった。成年向けのゲイ雑誌だが、いわゆるオカズ目的というよりも、興味本位と情報収集のために買ってみたものだ。
「藤真には、高校生向けの内容じゃつまんないだろう?」
 牧が表紙をめくると、ぴったりとしたビキニパンツ一枚の、筋肉質な男のグラビアがあらわれた。藤真の視線は逆三角形の胸筋から引き締まった腹、そしてくっきりと形が出てしまっている股間の膨らみに釘付けになった。
 牧の手がすでに切り開かれている袋とじの内側を開くと、修正こそ入っているが、立派に勃起したものをいやらしく下着から露出させた男の写真があらわれる。
「っっ…!」
 それを見た瞬間、内部がひときわ敏感になったかのように感じた。体の芯が疼き、血が沸き、じわりと全身に汗が滲む。
(こんなの、ちんぽのことしか考えれなくなるっ……!)
 平常時は無闇に男の裸にエロスを感じたりなどしない。しかし今は全く平常ではない。乳首や肛門をいじられ続けると、明確に自分の中の常識が狂っていくと感じる。女になりたいわけではないと思うが、体がメスの快楽を求めてしまう。もっと気持ちよくなりたい。プラスチックの玩具ではなく、雄の肉棒でかき回して、女のように犯してほしい。
「もっと、強いほうがいいか」
 牧の手が藤真の腰を──ローターのリモコンを探ると、藤真の体が大きく跳ねる。
「ひゃぁっ! あんっ、あぁ、んっ、うぅっ…♡」
「気持ちいいのか?」
「あぅ、だめ、これっ…♡」
「だめじゃないだろう?」
 頬を染め、呼吸を乱して目をとろんとさせて──陰部に玩具を詰められて、卑猥な写真に興奮している。卑しくいやらしい姿が、愛しくて堪らない。
「ん、ここになんか隠してるな?」
「ぁっ…♡」
 股間の一部が不自然に浮いたスカートをめくると、勃起した藤真の性器がショーツを押し除けるように頭を出して、先端からねっとりと糸を引く先走りを滴らせていた。
「お前、ケツにローター入れられて男の裸を見ながらカウパーだらだら垂らしてるのか。なんてスケベなんだ」
「そんなの、普通みんななるしっ!」
 藤真は股間を隠そうともせずに、触ってほしいと言わんばかりに胸を張り、腰を突き出している。無意識なのだろうか。素直にしゃぶりついて蜜を啜りたい衝動に駆られながら、牧はまだ抗って、意地悪い風に濡れた先端部を指先で軽く弾いた。
「ひゃっ」
「そんなことないと思うがな。で、藤真はどういうのが好きなんだ?」
 引き続きページをめくろうとする牧の手首に、藤真の手指が絡みつく。掴むよりも、もっとずっと繊細で淫靡な感触だった。
「先生、オレ、先生のおちんぽがいいな……」
「……!!」
 見上げてくる、ねだる視線に、今度は抗えずにキスをしていた。
「んっ、ぅ…♡」
 感じているのだろう、抱きしめた体がときおり小さく震えている。本当は自らの体を使って犯したくて仕方がないのだが、それも惜しいような気がして道具を使って引き伸ばしている。願望が宿ったかのように、牧の舌は執拗に藤真の舌を絡め取り、唾液を滴らせながら口腔を撫でまわす。
「ぷはっ…」
「ベッドに……」
 言いながらすでに藤真の肩を抱え、牧の体はベッドのほうを向いていた。
「はい♡」
 姿勢の変化で感じるのか、ベッドの上に座らせたときも藤真は声を漏らしていた。
「……あっ、んっ…♡ せんせー、これ、いつまで」
 甘えたような声を出して、いかにも抜きたいというように、太腿の内側に覗くローターのコードを指でいじっている。
「そうだな……」
 言いかけて、牧は唐突に落ち着きを取り戻す。
(待てよ、これはきっと罠だ。藤真はとっとと本番に行って、このプレイを終わらせたいんだろう。大丈夫、俺はスロースターターだからな、そんな誘惑には乗らんぞ)
 藤真のミスにそう怒っているわけではないのだが、せっかくの機会なので限界まで愉しませてもらうことにする。
「いや、まだだ」
 明確なプランもないまま、藤真の脚を折り曲げてベッドの上に置く。
「っ、パンツ見えっ…」
「パンツどころじゃないな」
 もう一方も同じくしてベッドの上でM字開脚させると、短いスカートが大袈裟にめくれ上がって藤真の下半身を晒す。ショーツの上に陰茎を露出させ、下からはローターの細いコードを覗かせた姿は、淫らの極みだった。
(ああ、エロいな、本当にエロい、最高だな)
 しみじみと見入るが、しかし欲望はとどまるところを知らない。
(だが、もっとエロいところが見たい)
「……そうだな、まず、一発射精してみようか」
「しゃせい?」
 知らないはずがないのだが、藤真はいかにも愛らしく首を傾げてみせる。
「そうだぞ。いつもしてるだろう? こうして、チンポ握って扱いて」
 牧は藤真の手に陰茎を握らせ、それを自らの手で包み込んで上下させた。
「ひあっ、あぁっ、んっ! ぁん、やめっ、やぁっ♡」
 ぴくん、ぴくんと腰が跳ねるのとは別に、ときおり全身がぶるりと震えるのは、挿入されたままのローターに感じているのかもしれない。
「あっ、あぁぁっ…!」
「ん?」
 喘ぎ声に混じる振動音が大きくなったような気がしていると、ショーツの穴からころんとローターが一つ落ちて、ベッドの上に跳ねた。
「だめだろう、勝手に出しちゃ」
 牧はべっとり湿った藤真のショーツを取り去ると、太ももを持ち上げ、吐き出されたローターを再びそこに押し付ける。藤真の体温によってか、ローターが暖かいのがひどく印象的だった。
「うぅっ、あ、ぁっ♡」
 容易くローターを咥え、ひくひくと収縮するさまは、喜んでいるようにさえ見えた。三分の二程度まで押し込み、口からピンク色が突き出た状態で指を離すと、ゆっくりと肉壁に押し出されて排出される。その様子が気に入って、入り口付近で浅くピストンさせるように、ローターを出し入れする動作を繰り返した。
「ああぁっ、あんっ、それやばっ…♡」
「気持ちいい?」
「きもちっ…♡ ひ、あぁっ♡」
「奥に入ってるのと、入り口のとどっちがいい?」
「んンッ♡ どっちもっ…!」
 藤真はすっかり後ろの感触を愉しんでいるようで、竿を扱く手の動作はごく緩慢なものになっていた。牧は苦笑に似た笑みを漏らす。もういいだろう。
「そうか。じゃあ先生がどっちも突いてやろうな」
 ズボンと下着を一緒に脱いで、ベッドの下に放り捨てる。戒められるように身を屈めていたものが、ようやく自由を得てのびのびと首をもたげた。
 藤真と目が合うとなぜか思い切りそらされて、思わず笑ってしまった。
 ベッドの上に乗り上げ、よそよそしく下を向いている藤真の前に立ちはだかって腰にそびえるものを突きつける。
「濡らしてくれ」
「んー……」
 藤真は正座から脛を外側に崩した、いわゆる〝女の子座り〟のような格好で、恥ずかしそうにこちらを見上げると、照れたようににこりと笑った。演技なのか、気分がよくなってフワフワしているだけなのかよくわからないが、どちらでもいいと思えた。牧の男根を両手で捕まえると、その形状と大きさをあらためて確認するように撫でまわす。
「先生のほうが、エロ本のよりでかいんじゃない?」
「っ…ふ、どうだろうな。だが、お前がエロいからこうなったんだぞ」
 急かすように腰を前に突き出すと、藤真は小さく笑ってそれを頬張った。
「おお……」
 ときおり呻くような声を漏らしながら、整った顔貌が、愛らしい唇が、黒ずんだ男根を嬉しそうに、さも美味であるかのように舐めずり、しゃぶっている。それだけで幸せになれるのだから単純なものだと思うが──
(いや、好きな相手が嬉しそうにチンポをしゃぶってくれるんだぞ……?)
 やはり特別なことのようにも思えた。
「はぁっ…」
 たっぷりとした唾液と体液の入り混じったものが、大きく張り出した亀頭と桜色の唇とに銀の糸を引く。もの欲しげに見上げてくる瞳が、子猫のようだと思った。
「よし、じゃあ次はスクワットだ」
「スクワット?」
 牧はベッドの上に脚を伸ばして座ると、濡れて鈍く光る男根のそそり立つ、自らの腰を示す。
「こっちに来て、ここに跨って」
「ッ…!」
 牧の言わんとすることを察すると、体の芯がきゅうと締まり、浅い位置に挿入されていたローターが体外に押し出された。
「あァッ…♡」
 振動するローターをゆっくりと放出する快感に、藤真は大きく身震いしたが、しかし奥に咥え込んだもう一つはまだ出てこないようだ。
「もう一個は俺が抜いてやろう」
 藤真はベッドの上を跳ねるローターのスイッチを止め、いかにも待ち構える格好の牧の腰を跨ぐ。スクワットと言われたので、膝を立てて股を開き、牧の上にしゃがむ形だ。
 着衣の意味をなしていない短すぎるスカートの下から、淫らに濡れた男性器がにょきりと生えて、下の口からはローターの細いコードが垂れている。
 愛らしくはあるがセーラー服に対しては大人びた顔貌に、いくばくかの恥じらいと、それ以上の期待とが見て取れる。
「ああ……」
(最高に下品だな、藤真、最高だ……)
 どういった感情なのか、もはや自分でもわからなかったが、牧は唇の端を歪めながら、ローターのコードを軽く引く。
「すげえ食いついて離さないぞ。そんなに気に入ったのか?」
「違う、勝手に奥に行った」
「そうか? じゃあ力抜いて」
 細いコードにさほどの強度があるようには思えない。ほどほどの力で何度か引くと、閉じていた口がひくひくと震えだし、
「ン、出るっ! あぁッあぁ…♡」
 大きな収縮と上ずった声とともに、ローターをつるりと吐き出した。牧はそれを拳の中に捕まえる。
「産まれたてホカホカだ」
 藤真の中の温度だと思うと、その暖かさにさえ興奮した。
「さて、先生が支えてやるから、ここに腰を落として……」
 牧は上体を後ろに倒し、傾けた枕に頭を預けると、自らの陰茎の根もとを指で支え「ここに」とアピールする。
 藤真は待ちわびていたかのように躊躇なく、亀頭を何度か尻の割れ目に擦り付けると、自らの内に呑み込んでいった。
「あぁっ、んんンッ…♡」
 肌に馴染む感触と密度が、入り口も奥も、玩具では満たされなかった部分もみっちりと埋めている。牧の体温と生々しい脈動とに浸るように結合部を押し付けると、先端部に最奥を撫でられて、くすぐったいような幸福感が湧いてくる。
「気持ちいいのか?」
「うん……ちんぽ、すごい……♡」
 自らのものを挿入して心地良さそうにしているさまは、とても愛おしく好ましいのだが、牧ももう我慢ができなくなっていた。悠長に鑑賞する余裕などなく、藤真の右手を自らの左手で、藤真の左手を自らの右手でそれぞれ握る。
「スクワットだ。支えてやるから、腰を上げて」
「はぁい」
 藤真は目を細めて笑い、手の指を絡めてしっかりと握り返すと、ゆっくり腰を持ち上げた。
「んんっ…♡」
「下ろして」
「おぉッ♡」
「繰り返して」
「はっ、あっ、あぁっ、んッ♡」
 慣らすような動作から、藤真はすぐに調子を掴んだように、一定のリズムで体を動かす。
 パンパンと肌がぶつかる音は軽快だが、うねる内部は濃厚に絡みつくように牧を扱き上げる。濡れそぼった陰茎がしきりに上下に頭を振って涎を垂らすさまが、きわめて卑猥で目に快感だ。
 藤真の動作に合わせ、ベッドのスプリングを使って牧も下から突き上げる。
「はっ♡ あっ、あんっ、止まんないっっ♡」
 肛門に男の性器を出し挿れされながら歓喜の声を上げる、あさましい姿が愛おしく、愛らしく感じられて堪らない。
「いいぞっ、その調子だ、新陳代謝上げてけッ!」
「あぅっ♡ ちんちん代謝っ♡ アガっちゃ、あぁッ♡  あぁアァッ♡♡♡」
 やがて高く弱々しい声を上げながら、藤真は勢いなく射精した。牧の突き上げる動作に押し出されるように、ビュ、ビュッと少しずつ吐き出される精液が、牧の胸を生ぬるく濡らしていく。
「はぁ、あぁっ…ぁっ……♡」
 貫かれた箇所をヒクつかせ、だらしなく口の端を緩め、余韻に浸る藤真に鞭打つように、下から思い切り突き上げる。
「あ゛ぅっ♡」
「先生がいいって言うまでだ」
「ふぁあい…♡ おぁっ、あぁっ、あんっ♡」
 藤真は動作を再開すると、すぐに甘い声を上げた。上下運動ばかりでなく、中を抉り、含んだ男根の全体を味わうように、妖艶に腰を使う。射精したきりだらんとして、常時の大きさに戻った性器は、体液を滴らせながらしなやかに揺れていた。中だけで感じているのだ。
「エロいやつだな……ほんとに……」
 だがそうさせたのは自分だ。そう実感すると堪らない満足感と、愛おしさと──幸福感に襲われる。
(誰にも渡さない)
(ずっと一緒にいよう)
 両の手をしっかりと握り、夢中で腰を振りながら、状況とは無関係な言葉まで頭に浮かぶ。頭の働くような情況ではなかった。犯し、煽られ、追い上げられていく。
「っくぅ、あぐっ、あぁっ…♡」
「藤真、いくぞ」
「あんっ、あぁ、いいよ…♡」
 蕩けるように甘い声に弾かれたように、牧の辛抱は決壊する。
「っ、藤真、ふじまッ……!!」
「あ、あァ、ぁ……♡ 出てる、中……♡」
 弾け飛ぶ快楽の中、そう喘ぎながらも動作を止めない藤真に搾り取られる心地で、牧は小さく笑った。
「っふ……」
 貪欲な肉体はいまだ快楽を求め、肉棒に食らいつくように痙攣している。食らわれるほうもまた、精魂尽き果てるには遠い。むしろ体内で新たな欲望が作られ、さらに溜め込まれていく気さえする。
「──それじゃあ、次はマット運動だ。向こうを向いて」
「んぅっ……♡」
 力が抜けて重く感じる持ち上げ、藤真は牧の上から退くと、言われた通りに背中を向ける。
 牧は起き上がり、背後から藤真を抱きしめると、そのまま押し崩すようにのしかかった。
「わわっ」
 ベッドに胸を押しつけ、腰を前に折った勢いで、中に出されていた精液が陰部から下品な音を立てて噴き出す。
 セーラー服姿でベッドに伏せ、剥き出しの尻から白濁を垂れ流す乱れきった光景に、牧は目を細めた。
「最近の高校生はケツから射精するのか? 器用だな」
「おぉっ、あぁっ…♡」
 もはや迷いも焦らしもしない。何か言おうとした藤真の言葉を後ろから塞ぐように、いきり立ったままの男根を再び挿入する。
「っんッ! これマット運動じゃなっ、あぐっ、あぁッ♡」
 最奥を掻き回すように腰を振れば、抗議の声も簡単に甘い喘ぎに変わる。快楽に弱いところもまた愛おしいと思う。
「まあいいじゃないか、後ろから突かれるの好きだろう?」
「んぉっ♡ あ゛ぁっ、あぁンッ♡」
 いっそう密着した肉体が容赦なく打ち付けられ、開いた体の最奥を抉る。擦れ合う局部の感触のみでなく、変態的な状況で荒々しく求められる実感に、藤真は甘い被虐の海に溺れていく。
「っ、あぁァっ、好きッ…!!」
「ああ、俺も大好きだ、藤真……ッ!」

 藤真は高校を卒業して以来、牧と同棲しているが、花形との友人関係も長く続いていて、難解なこと、特に電子機器関連については深く考えずに花形を頼ることにしていた。適材適所である。
 当然のごとく、牧の携帯電話を洗濯したあとにも真っ先に花形に連絡をした。確実ではないと言っていたものの、考えがあるようだったので藁にも縋る思いで牧の携帯電話を託して一晩──いや、正確にはもっと早かった。一通りのことを終えた藤真が眠り込んで翌朝起きると、無事牧の携帯電話が起動した、データも残っているようだとの報告が藤真の携帯に入っていた。藤真は自らの携帯電話を握りしめてガッツポーズをとる。携帯の水没すなわち死、というのが世間での通説であった。
(はぁぁ〜天才! さすがオレが見込んだ男! 正直抱かれてもいい……!!)
 花形がそのような気配を見せたことはなく、藤真にもその気はない。牧との生活を続けるうち、価値観が若干歪んでしまったゆえの思考だった。

 さっそくふたりで花形のところへ携帯電話を受け取りに行き、その足で携帯電話ショップに行って機種変更をした。データが生きていたとしてもそのまま使い続けるのは怖いので、どちらにしても新しいものに買い換えよう、とは昨日時点で決めていたことだった。ついでに連絡先のデータを業者が預かってくれる『電話帳お預かりサービス』にも加入しておいた。
 帰宅した藤真は、牧の新しい携帯電話を物珍しげに手の中で弄ぶ。
「これがウワサのスマートフォンかー」
 少し前にアメリカから入ってきて、日本でも話題になり、じわじわと増えてきているタイプのものだ。アルミとガラスで覆われたごくシンプルな一枚板の形状は、これまでの〝コンパクトな電話機〟とは全く異なるものだった。
「……なんか、弱そう」
「弱そう?」
「前が全部ガラスで剥き出しだから。落としたら終わりじゃね」
「強化ガラスらしいから、そう簡単には割れないんじゃないか? まあ、なんかあったらまた愉しませてもらうから気にするな」
 にやりと笑った牧に対し、藤真はうさんくさいと言わんばかりに眉を顰める。
「……セーラー服好き?」
「セーラー服を着てる三十代の藤真が見たかった」
「なんだそりゃ。屈折してんな」
 そうは思うが、満足げな牧の顔を見ていると嘘とも思えない。
「そうか? この年で高校生と付き合いたいとか言いだすより健全じゃないか?」
「あー、この前高校生が何人かで歩いてるの見掛けたけど、だいぶ子供って感じだったな。そんな自覚なかったけど、オレもあんなだったのかな」
「俺だってきっと、周りから言われてたほどは老けてなかったと思うぞ」
(いやそれはどうだろうな……オレは昔から年上っぽいのが好きだったと思う。『ぽい』のが)
「俺も藤真も、変わんないようでいて、いろいろ変わっていくもんだ」
 藤真の思いなど知る由もなく、のんびりとした口調で呟いた牧に、なんとなく笑ってしまった。
「そうだね」
 昔、牧のスピードに、自分はついていけないと感じたことがある。置いていかれる感覚ばかりがあって、双璧という言葉を疎ましく感じていた。しかし今はもうない。
(今はたぶん、一緒に歩いているもんな)
 そして変化を感じないほどゆっくりとした速度で、これからもふたりとも変わっていくのだろう。
「藤真、こうするとカメラモードになってな」
「おお」
「ここを押すとインカメラってのになって」
「こっちが写ってんじゃん。すげえ」
 パシャッ!
「おいっ! 勝手に撮ってんじゃねえ!」
「いいじゃないか。びっくりしてる、かわいい顔だ」
「なんでもかわいいって言うやつに言われても嬉しくねぇんだわ」
 そうは言ったがそれ以上牧の行動を咎めることもせず、スマートフォンの画面を辿々しくなぞる指を、微笑ましく眺めていた。

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