男子トイレの恋人

【R18】裕太と観月の秘密の逢瀬。なんでも大丈夫な方向け。今までアップした話とは繋がりありません。全3話 [ 1話目:3,269文字/2022-09-04 ]

1.
 
 真夜中、今日もあなたに会いに行く。俺たちの秘密、フロアのトイレの一番奥の個室へ。
 
 まだ新しい寮の、いつもきれいに掃除されてるトイレ。日中のうちはなんとも思わないけど、今は静かすぎて照明の青白さが際立って、自分がいけない場所に迷い込んだ気分になる。
 目的の個室に踏み込むと、俺のすぐ後ろにくっついて観月さんも入ってくる。密着はしてないものの、至近距離に人がいる生暖かい空気。それだけで胸がざわざわして汗が出るが、即振り返るのも余裕がなくてカッコ悪い気がして、ロックの音が聞こえるまで前を見ていた。
「裕太君」
 やわらかな声が耳を撫でてくすぐったい。ささやくくらいの大きさだって観月さんの声はよく聞こえる。こうして俺を呼んでくれるときはなおさらだ。
 振り返ると観月さんは長い前髪の下で目を伏せて、照れるような、思わせぶりなような微笑を唇に浮かべていた。服装はいつものちょっとひらひらした感じの上下揃いのパジャマ。上着の裾が股下くらいまで長いデザインだ。
 透けるような肌の色、桜色の唇の色ツヤや形、まつ毛の長さ、落ちる影と目のカーブ、細い首。ほかのひとをこんなに観察して心を打たれたことなんてないくらい、いつからか俺は観月さんに目も心も奪われていた。心のほうが先だ。それは間違いなく純粋で、人に明かすのを躊躇するような性質のものじゃなかった。むしろ観月さんの素晴らしさをほかのやつに教えたかったくらいだったのに、今となっては。
「観月さん……」
 肩幅が狭くて全部のつくりが小さくて、間近で見ると思ってるより小柄で。衝動的に〝抱きしめたい〟って思っても、今日も怖気づいたみたいに腕は動かない。華奢な顎がツンと上がる、ちょっとの動作に誘われて──命じられて。俺はゆっくり顔を近づけ、目を閉じて、儀式のようにキスをした。
「……」
 柔らかくしっとりとして少し冷たい。現実味なんてない、猫が鼻先を寄せるようなおぼつかない感触だけでそれは離れていく。観月さんは俺を押しのけて上半身を前に傾け、トイレのタンクに手を置いた。突き出された小さなお尻に、ズボンの中で硬くなってた俺のモノが当たる。振り返って意地悪く微笑う観月さんから慌てて目を逸らした。
 初めて出会ったとき、光が差したようだった。聖ルドルフっていう学校といい、教会で歌う姿といい、このひとは天使なんじゃないかと思った。厳しくて、聡明で、潔癖できれいなもの。
 だけど違った。
 底にあったのは無償の救いではなく思惑で、シンプルとは言いがたいけれど観月さんも俺と同じ人間だった。
 ショックではなかった。……いや、ショックは受けたのかもしれないけど、それ以上にはっきりと、観月さんのことが愛しくなってしまった。
「ねぇ、裕太君」
 観月さん、寮生管理委員なのに、就寝時間を過ぎて俺とこんなとこで待ち合わせしてねだるような声出して。本当にエロい。
「あぁ……」
 俺は曖昧に返しながら、差し出されるかわいいお尻を両手でつかまえた。手のひらにちょうどいいサイズ感のそれを、薄い布越しに撫で、揉みしだく。考えてなんていない。反射的っていうか、本能的な行動なんだと思う。
「んんっ♡ ……焦らさないで、裕太君?」
 吐息混じりに色っぽくささやいて、誘うように腰が揺れる。焦らしてるつもりじゃなかったけど、たまらず観月さんのズボンのゴムに指を引っ掛けてずり下ろした。
 花柄とかフリルとか好きみたいだから、下着もレースとかかと思ってたら、普通のグレーのボクサーパンツだった。『下着は機能性がいちばんです』だそうだ。別にがっかりしたわけじゃないし、着心地にこだわるのは観月さんっぽくはある。
 ズボンとパンツを下ろし、パジャマの上着をめくり上げると白くて綺麗なお尻が現れる。
(……!!)
 同意のうえだけどやっぱり痴漢みたいな悪いことしてるようで、スリル……なんだろうか。この興奮はエロいってだけのもんじゃないと思う。指が空中で揉むような仕草をしてしまって、自分に苦笑いする。観月さんが後ろ向いててよかった。
 太ももからなだらかに続くスレンダーなお尻は、今までセクシーだと感じてきたものとは全然違って、綺麗すぎてマネキンみたいで逆にエロい。だって、日ごろの観月さんのイメージに対して幼い印象すらあるこのかわいいお尻に……俺のちんこを──俺は無意識に取り出してた勃起ちんこを浅い谷間に上向きに押し付けながら、観月さんの尻を揉んだ。
「あぁんっ♡」
 観月さん、お尻揉まれると感じるんだ、エロいよな。電車とかで痴漢に遭ったら声出ちゃうんじゃないかって密かに心配してる。
 自分のモノを特に汚いとかなんとか思ったことはない。別に普通だと思うけど、観月さんの肌って本当にきれいですべすべしてて、そこにこう、挟んで擦り付けてると、きれいなものを汚してるって感覚でクラクラする。……さっきから、俺って実は悪いやつなんだろうか。
「んっ、裕太君……ッ」
 柔らかな下腹部を手のひらで撫で、上着の中に忍び込んで肋骨、胸へと撫で上げる。華奢な体の線を、観月さんのかたちを頭に描きながら。
「はっ、んっ……♡」
 たまたまお風呂で遭ったときに見てしまった、見ていいのかって戸惑ったピンクのエロい乳首の、ひときわ柔らかな皮膚の中心の小さな突起を指先に味わう。
「ぃあっ♡」
 反応だけじゃなく、指先の感触ももう全部かわいい。普段の観月さんはたまにかわいいところが見えるけど、やってるときの観月さんはずっとかわいい。だって、俺にこんなこと許してる時点で。
 小さな乳頭を押し潰しながら撫でまわすと、高い声が漏れて腰が色っぽくうねる。
「んンッ♡ 裕太くん、ボクもう準備できてるからっ…♡」
 ああ、本当にエロいな……エロいとか、たまらないとか、そういうわかりやすい感想しかもうなくて、尻に擦れてる俺のちんこも限界だ。だってこれは、俺だけの衝動じゃない。観月さんだって俺を求めてくれてる。
 薄い尻肉を掴み開くと、薄ピンクの綺麗な、正直舐めれるって思う肛門に、爆発しそうな自分のモノを押し込んだ。
「はっ! あぁっ、あっ…♡♡♡」
 胸を向こうに突き出し、細い体が儚げにのけぞる。俺はゆっくりと観月さんの中に沈んでいく。誰も知らない、俺しか知らないところ。
「あぁ……観月さん……」
 窮屈だけどあったかくて、俺のこと欲しがるみたいにみっちり締めつけてくる。俺の腹と観月さんの尻がくっついて、俺、観月さんにこんなこと──猛烈な興奮で心がぐちゃぐちゃになって、背筋がぶるっと震える。ちょっとイきそうになったけどこらえた。
「はァっ…♡ 裕太君、いい……」
 うっとりした声色で、どんな表情してるのか想像はつくけど、本当はちゃんと顔が見たい。バックからがっつり繋がるのはエロいけど、次は向かい合ってしたいな……って、もう次のこと考えてしまうのは、こうなると俺はあんまりもたないってわかってるからだ。
「っん、ゆうたくんっ♡ 好きッ…♡」
 細い顎を上に向けて、喘ぐように言いながら、観月さんは小刻みに腰を動かす。
「あぁ……俺も、っす……!」
 たぶん俺のほうが好き。思慮深いところも、大胆なところも激しいところも好きだし、完璧じゃないとこだってたまらなく好きだ。
 ずっと繋がってたいって思ってるくらいなのに、観月さんの小さな動作に誘われるように、俺は細い腰をがっしりと掴まえて、腰を前後に動かしていた。観月さんの感触を味わうように、長いストロークを意識する。
「はンっ♡ あっ、あっ、あぁんっ♡」
 俺の動作に合わせて歌うような声が上がる。俺のしてることで観月さんも気持ちよくなってる……そう思うといよいよ歯止めが効かなくなって、夢中で腰を打ち付けた。
(あぁ、もうっ……!)
 ショートケーキの最後に残したイチゴみたいに、大好きなものはいつも儚い。
(観月さんっ、観月さんッッ……!!)
 人気はないが、一応フロアの共同のトイレだ。声を出してしまわないようこらえながら、俺は観念してひたすらに終わりを目指す。
 
 
 

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