SDワンライ

SD版ワンライ企画2回目の参加です。お題は『雨宿り』
割り切りというかセフレの仙藤(仙→藤)。付き合ってはいません。
名前は出てきませんが藤真は他に相手がいます、というか牧さんのつもりで書いてました。

前回に引き続き2000字くらいでした。私は一時間ではこのくらいまでの文字数なんでしょうね。かといって1万字の話が5時間で仕上がるわけではないんですが。
そして一時間クオリティというか、設定が大丈夫でお暇な方だけお読みください。
 


 雨宿り
 

 去年の冷たい雨の日、ずぶ濡れのあなたと出会って俺は、頬を伝う熱には気づかないふりをしてただ
「ひどい雨ですね。うちで雨宿りしていきます?」
って言ったんだ。

 俺の住んでるアパートでシャワーを浴びて着替えを要求して軽く食べてなお、藤真さんはふてぶてしく言った。
「帰るのめんどくさくなったな。泊めてくれねえ?」
「宿代頂戴しますよ」
 出会い頭から尋常な様子じゃなかったから、後輩なりに遠回しに『帰ったほうがいいですよ』って言ったつもりだったんだけど
「おいくら万円?」
「おカラダで払ってくれたらいいです」
 これだって、嫌がるって思って言ったんだ。戯け顔を作って藤真さんの体をベッドに押し崩した、俺の体を突き放してキレて笑ってくれたらそれでおしまいだった。だけど違った。
「……それさぁ、まじで言ってる?」
 俺は妙に察しがいいほうで、藤真さんが「まじで」そう聞き返してるんだって気づいてしまった。そうしたらもう止められなかった。
「まじでって言ったら、どうします?」
 どうする? どうなる? 好奇心を抑えることができなくて、薄い胸をシャツの上からまさぐった。俺のシャツだ。だけどその下にはまだ知らない鼓動がある。
「泊めてくれるんなら、それでもいいかな」

 それからだ。度々藤真さんと致すようになったのは。
 好きとも会いたいとも言わず、ただ「会える?」とか「時間ある?」とかそんなレベルで、一応体育会系なんで基本藤真さんの都合で。
「仙道って、もともと〝そう〟なの?」
「いんや? ……て、正直に答えちゃいましたけど、詮索はナシじゃなかったでしたっけ」
「うっかり答えるほうが悪い」
「まあ、そりゃそうですけど……」
 藤真さんは男との行為には慣れていた。そしてめちゃくちゃエロかった。エロいのについては藤真さんがどうっていうより男女の差なんだと思う。互いに快楽だけを追求する割り切りの行為に、俺は簡単にのめり込んだ。
 なぜか昔から女の子に不自由したことはなかったけど、もう元には戻れないんじゃないかってくらい、これはシンプルに強烈な快感で、そして少しだけ背徳的だ。

「ナマで中出し、さすが都民は進んでますなぁ〜」
「いやいやいや、誰がさせてると思ってんですか!?」
 恋人じゃない。そんなつもりじゃないただの遊び相手。でもセフレっていったら「友達じゃねえよ先輩だろ」って怒られてしまった。じゃあ俺たちって一体なんなんだろう。

 インターホンが鳴って、あっけらかんとした声がした。
「はろう。雨宿りさせてよ」
「人の家に押しかけてきて雨宿りもないでしょ!」
 しかも傘までさして。そんなわがままな先輩を家に入れてあげる俺って本当お人好しだ。
「いや、最初のとき、そうだったなって思い出してさ」
「そうですね。季節は違ったけど……んむっ」
 キスはあんまり好きじゃないって言ってたくせに、今日は藤真さんから仕掛けてきた。まるで言葉を封じるためみたいだった、なんて全く思わなかったことにしてあげます。

 あんまり設備の充実してないこの部屋には除湿器なんてなくて、裸で抱き合った二人の肌が六月の湿気た空気を帯びてぺたりと張り付いて、剥がれて、それを繰り返す。普段は不快でしょうがない感触だろうに、妙に愉快な気分になって、夢中で藤真さんの体を撫でていた。
「ねえ、ぺたぺたして離れたくないって言ってるみたいですよ」
「離れたくない、ってオレが言ったら嬉しいのかよ? お前は」
 この人、プライベートではめちゃくちゃ思ってることが顔に出るんだ。いや、もしかしてわざとやってる? ともかく、藤真さんの顔は俺の愉快な気分とはぜんぜんそぐわないもんで、俺は少しだけ焦った風にする。
「えっっ、そんな、ちょっとした冗談じゃないですか」
「だよな、男と付き合ってる自体、きっと冗談みたいなもんなんだろうな」
「ふじっ…はっ…」
 藤真さんの手が俺の股間に伸びて、俺は素直に口を噤む。
 だいたい、なんで付き合ってる相手がいるのに俺と遊ぶ必要がある? 別の相手じゃなきゃいけない理由があるからだろう。それは事件かもしれないし、思い込みかもしれない。なんにせよ俺は余計なことは言わない。言っちゃいけない。めんどくさいって思われたら、きっとあっけなく終わってしまうんだろうし。

 ああ、俺はいつの間にかこの関係を終わらせたくないって思うようになっていた。
 なぜかって、気持ちいいから、それ以上のことがあっちゃいけない。そこにたどり着いたらきっと二人ではいられなくなる、なんとなくそんな気がする。そして俺の勘はよく当たる。

「昨日も雨、今日も雨」
「梅雨入りしましたから、しばらく雨でしょうね」
「そーだね。ウチの体育館も結露がすごくて嫌な感じ」
 そっからバスケの話に持って行きたかったのかと、思わなくもなかったけれど俺は
「また雨宿り、しにきてくださいね」
 本当にあなたのこと想ってるなら、こんなこと言えないはずなのにね。

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